「ふぁ…」 眠そうな目を擦りながら、タクシーから降りる者一人。 スーツをラフに着熟したその人物は、白を基調としたお洒落な店へと入っていった。 「おは〜」 「あ!おはようございます!」 「おはようございます!」 店の中には後輩らしき人間が既に来ていて、その人物を出迎えた。 「ん?彼女は?」 「あ、控え室で仮眠をとってます」 「オッケ〜」 そう言うとニヤリと笑って、その人物は控え室へと向かっていった。 かちゃ… 出来るだけ音をたてぬ様に控え室に入ると、すぐ視界に入った長い黒髪の綺麗な女性。 彼女は自分のスーツを上掛け代わりに、ソファに横になっていた。 (…) 足音を殺しながらゆっくり近づく。 (うは〜いつ見ても綺麗な子だねぇ〜) 得意の親父仕様で彼女の綺麗な頬を突いた。 ガッッ!!! 否、突こうとした。 「…また…」 「あれ〜やだなぁ〜狸寝入り?」 「…貴方が入って来るまでは寝てた」 不機嫌そうにソファから身体を起こすと、捕まえた指を払い退け、顔にかかる髪を掻き上げた。 寝起きの悪さに拍車がかかっているのは気のせいでは無いだろう。 「そのまま寝てれば良かったのに〜♪」 「そしたらどうなるか解ったもんじゃない」 「言うね〜。ま、敢えて否定はしないけど」 「…蓉子さんに言い付けますよ」 「うへっ!それだけは勘弁」 “もう手は出しません”と言った感じで降参ポーズを取る。 ただ、それとは不釣り合いな程、色素の薄い瞳は実に楽しそうに歪められていた。 とある繁華街に存在する外装のお洒落なこの店は、知る人ぞ知る、大人気ホストクラブ。 「そもそもホストクラブって男が働くとこだろう!?何故私が…」 「堅い事言いなさんな。それを言っちゃお仕舞いよ」 「ぐっ…」 そんな有名店でNo.1を務める女性は、日本人離れした容姿と女心をくすぐる巧みな話術で、 その地位を欲しいままにしていた。 「聖さ〜ん!ご指名で〜す!」 「はいよ〜」 綺麗な女性には目が無い聖は、サービス精神(と言うよりも自己満に近いが)が旺盛で、 しかしそれでいてホスト対客、という一定の距離の保ち方も実に巧い為、多くの常連客を得ていた。 まぁ、客からしてみれば、更にもう一歩踏み込んだ仲になりたいのは山々なのだが、 それを聖は絶対させなかった。 「なつきさ〜ん!ご指名で〜す!」 No.2ホストとしてここの店を支えているのが、 “クールビューティー”の異名を持つ、黒髪の綺麗な女性、なつき。 聖と違って弾んだ会話は出来ないし、お酒も大して強くない。 ホストとしては余りにも不向きな条件なのだが、 それでも彼女がNo.2の地位を不動の物としているには、それなりの理由があった。 彼女の常連客曰く、 “たまに見せる優しさがたまらない”、“普段はクールで格好いいのに、時々妙にヘタレてるとこが凄く可愛い”など、 見た目とのギャップにやられる女性が多いのも、なつきの常連客の傾向の様だ。 中には“なつきだからえぇんどす”と言う意見もあるが…まぁそれは置いとくとしよう。 そんなNo.1とNo.2を筆頭とし、有能オーナーの管理により、ここのホストクラブは運営されているのであった。 「ねぇ、聞いた?有能だって」 「まぁ何だかんだ言って貴方は何でも出来るしね。とは言っても面白半分だろうけど」 「当たり前じゃない。だってこんなに楽しい仕事もそう無いわよ?女ホストだなんて。しかもそれに釣られる客の多い事多い事」 「そりゃそうよ。私達が相手してるんだもの。ねぇ?なつきちゃん」 「オーナー…私はもう辞めた「なつきちゃんは面白いからダメ」 「…」 若者達が集い賑わう中、今宵も店は開店した。 -------------------------------------------------- 言い訳。 日記でおかしな事を口走ってしまったのが運の尽き(笑 “ホスト聖”と“ホストなつき”の もう大変な程の妄想ssとなってしまいましたが ここは…笑って頂ければ幸いです、ホント(笑 多分続きます(いるか?w >>次へ