「あんた、こんな所で何してんの?」

「…」




自分と向き合いだしてから何日か経ったある日。

私は花園に来ていた。



ここは学園の中では指折りの特別な場所。


…花園は静留と私が初めて会った場所だから。



「ふん。シカト?別にいいけど」

「何の用だ」






ここに来る事を決めた時、静留と出会う可能性も考えたが、
会ったら会ったで、もう別にいいと思った。

そんなリスクを背負ってでも、ここに来る事は自分に何かを与えてくれるだろうと踏んだから。

静留との事を向き合うにはここ以上に良い場所は無い。



「最近学校来てなかったみたいじゃん」

「…何で知ってる」

「あおいが心配してた」

「あぁ…あおいか」




よくよく考えてみれば奈緒とこうやって話すのは初めてに近い事に気付いたが、
意外と喋れる自分に驚いた。



「藤乃とは会ってんの?」

「……お前には関係ない」

「別にあたしもどうでもいいけど」

「なら聞くな」

「この前藤乃見かけたけど、今にも死にそうな顔してたわよ」

「……」




静留…やはりまだあの時の事を…?




「生徒会は今かなり忙しそうだしねぇ」

「…そうなのか」

「はぁ?そんな事も知らない訳?お気楽ね、あんたは」

「…貴様ッ!!」




貴様に何が解る!私達の何が!!


感情のままに、私は奈緒の胸ぐらを掴んでいた。

しかしそんな私を睨み付ける奈緒の表情はどこまでも冷静だった。



「離してよ」

「……」



もう…一体自分は何をしているんだ…

呆れて脱力する私に奈緒は溜め息をついて

「ばっかじゃ無いの。」とだけ言い残し、花園を去った。



「……あいつ…」




今思えば奈緒は、私の静留に対する感情にも薄々気付いていたのかも知れない。



「……情けない」



確かに静留と会わない日が続いて、自分の気持ちは見る見る沈んでいった。

とにかく寂しくて仕方がなかった。


こういう状況になって初めて、あいつが側に居てくれた事が有り難い事だったんだと気付いた。





―――私はずっと私の側で静留に笑っていて欲しいんだ。





それを愛と呼ばずに何と呼べばいいのか。




本当は…今日花園に来る前から答えなんて出ていたのに。





静留への想いを誰かに諭されるなんて…情けなくて涙も出なかった。



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