ずっと欲しくて。
でも手に入る事は無くて。
彼女を泣かせない為にと、彼女を傷つけない為にと。
自分の感情さえ時には偽り、敵になってまで守ってきた愛する人。
その相手に、今は偽りのない気持ちをぶつけられる。
…ぶつけていると言うのに。
「蓉子は…」
彼女の綺麗な蒼眼は、あからさまに疑いの色。
自分の愛が届かない。
「優しいから…」
ヤサシイ?
ヤメテ!
ふいに弾かれた様に反応する身体。
口付けと言うには余りにも痛々しいそれ。
「…んっ!」
どうして好きだと言ってくれたのに。
どうして好きだと伝えられたのに。
どうしてお互い想い合っているのに。
どうしてこんな冷たくて乱暴な口付けしか出来ないのか。
こんなものを望んだのでは無い。
「っ…ようこ!!」
突き放された肩。冷たいキスは微かに血の味がした。
彼女は泣いていた。
唇の端を僅かに紅く滲ませ、彼女は黙ったまま泣いていた。
しかし心はきっと悲鳴を上げて泣いている。
「…よう…こ…」
触れる度に傷つけた。
茨の棘が彼女の心を裂く。
「まだ解らない?」
それでも
「私は貴方を愛してるわ」
蓉子は
「愛してるの…」
こうやって自分に温もりを与えてくれる。
傷ついても尚。
茨の檻を開け放つ。
無理にこじ開けるのではなく、優しくかき分けて。
「…蓉子」
優しく抱き締めた肩や背中は、見た目以上に華奢で驚いた。
「蓉子」
こんなにか細い身体で。
いつもいつも今にも崩れてしまいそうな自分を支えてくれた。
「ごめんなさい。それからありがとう…」
「礼なんて…」
「私は蓉子が好き」
彼女の漆黒の瞳いっぱいに映る様に、じっとその瞳を見つめる。
「愛してるの」
恥ずかしそうにはにかんだ彼女の笑顔が愛しすぎて、思わず泣きそうになったのを寸でで堪えた。
「…聖」
彼女の唇に浮かぶ不似合いな朱を癒す様に
私はどこまでも優しく、それでもこの想いが伝わる事を強く祈りながら
ゆっくりと口付けを落とした。
自分と居て、果たして彼女は幸せになれるのか。
無責任にも、また傷付けてしまうと思う。
けれどその傷は
自分の愛で癒してあげたいと
今はそう思うから。
--------------------------------------------------
やっと終わりました…
でもイマイチ不完全燃焼…orz
時間が経ち過ぎてしまって、自分で前の話を覚えていないってのが痛い…
自分の中で、蓉子は悲恋なのです。
聖もそうですけど、何か蓉子の方が…