他人なんて絶対信じない。

認めてやんない。

あたしはあたししか信じない。

そうやって生きてきた。

そしてこれからもそうやって生きていく。

それでいいと思うし、それ以外の生き方なんて解らない。

だからこれでいい。





奈緒独白





(…)



あの戦いが終わって、風華学園もだいぶ落ち着いた。

所々に残る傷跡はいずれ修復されて跡形も無くなる事だろう。

それこそ私の目の傷が治った様に。



(…)



表面的な部分なんていくらでも修復出来るものだから。

いくらだって着飾る事が出来るし、いくらだって隠す事が出来る。


だからあたしは人なんて信じない。

上辺だけの付き合いなんて反吐が出る。

こんな無意味なものは無い。



(…あー…むかつく)



HiMEと呼ばれたあの戦いの当事者達は、ある意味好感が持てた。

結局みんな自分勝手なんだと言う事が再確認出来たから。

あいつらは醜くて脆くて面白かった。



騙し合いで負けるつもりは更々無かった。

でもそれも初めのうちだけだったけど。


自分の信念を突き通して戦った奴、自分の愛する人の為に命をかけて戦った奴。

実はそんな奴らばっかりだった。


…確かにあたしだってママを守りたかったからだけど……


中にはこんなあたしなんかを守ろうとした馬鹿が付くほど人がいい奴もいたくらいだし。



(…)



あの状況では多分誰でも本性が出るものだろう。

あいつらの内面を見てしまった事で生まれた葛藤。

むかつくのはあいつらに対してじゃなくて、あいつらをほんの少しでも好きになってしまったあたし自身。

人と接するのも本当はいいものなのかも知れないと思う様になってしまったあたし自身。

今まで隠してきた弱みや脆さを誰かに受けとめて欲しいと思ってしまったあたし自身。



本当に頭にくる。


ママが戻って来てくれて、張り詰めていた糸が少しだけ弛んだ。

そして生まれた心の隙間にあいつは見事に入り込んで来て。

あたしをこんなに弱い人間にしていく。



(…違う)



それにあいつが気付いていないと言う事が更に頭に来る。



(…あいつが弱くしてんじゃない)



あいつの鈍感さと優しさは罪だ。



(…元々弱いのはあたし…)



「むかつく」

「え?」

「何でもない」

「は?あ、ちょっ…」



罪だ。

そしてそんな罪にはそれなりの罰を。



「奈緒っ…!?は、離せ」

「もう少しだけ…」

「……どうしたんだ?何か嫌な事でも…」

「前見てみ?」

「え?」



絡ませた腕を無造作に離してあたしは歩きだした。


そうよ。

たまには苦労したらいい。



「…なつき…あんた…」

「ち、違う!これはっ!」



人の心に勝手に入って来て、占領するだけして行くような奴は少し痛い目みるべきよ。



「じゃぁね〜」

「え!こ、こら奈緒っ!おま…」

「なつき…どういう事か説明して貰おかしら」



ほんと、みんな馬鹿ばっか。

でもあんなんだったらあたしも馬鹿になってもいいかなって思う。



……多少、だけどさ。



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言い訳。
奈緒の一人称が書きたかったんです。
ただそれだけ(ぉ

甘くもなけりゃオチも無い…
なんてこった…