仲良くなったら仲良くなった分だけ
好きになったら好きになった分だけ

素直になれなくなる。

こんな自分の性格を普段は余り気にしないけど、時々酷く嫌になる。

こんな事の繰り返し。

でも直せない。

多分きっと直らない。




意地っ張り





着慣れたセーラーを卒業し、見慣れてはいたブレザーに袖を通して早二ヶ月余り。

未だにあいつと同じ制服を着ている事に慣れない。

何というか…気恥ずかしい。



(…)



思い出さなければ良かった。

頬が勝手に熱くなる。








 「あ。」



会いたいと思う時には会えないのに、会いたくない時に限って会ってしまう。

自分の運の無さに泣けてくる。

今日はどちらかと言えば後者の心境だったのに。



「あ、奈緒ちゃん」

「ん?あぁ奈緒。久しぶりだな」



暖色の制服に蒼い漆黒の髪は良く映えるな、と思った。



「へ〜意外。鴇羽はともかく、あんたちゃんと学校来てるんだ?」

「失礼な奴だな。大体毎日来てる」

「大体、ね」

「舞衣!」

「ふぅん…」



結構来てる割には会って無いけどね。

そんな事なら来ていないと言って貰えた方が良かった。




しかしよりによって何で今日。

一番会いたくない今日この日に限って…



「どうした?」

「別に」

「別にじゃ無いだろ。そんな不機嫌そうな顔して」

「っ…!あ、あんたなんかに会っちゃったからよ」

「はぁ?おまっ…!」



どうして。

今日が何だって言うの。

あいつが何したって言うの。

どうして口を割って出てくる台詞はこんなのばかりなの。

素直になりたいのに。

どうして。



俯いた顔が上げられない。

握りしめる拳が痛い。

もう意味が解らない。

自分が嫌いになりそうだった。



「…訳の解らない奴だな。それとも…そんなに私が嫌いか」

「ちがっ……」



瞬時に出てきてしまった本心を寸でで殺した。

確実にばれているけど。



「奈緒ちゃん」

「……何よ」

「なつきの奴ね、昨日来てなかったのよ。学校」

「…?」

「昨日だけじゃない。一昨日もその前も」

「舞衣!?」

「素直じゃないからさ、なつきも」

「…はぁ?意味わかんないんだけど」



舞衣の不可解な台詞に、知らず知らずの内に奈緒の眉間に皺が寄る。



「お、お前は黙って…」

「祝いたかったのよ。ね?」

「え…」

「だ!誰が奈緒の誕生日なんか……あっ」



しまった、と言わんばかりに口元を押さえるなつきの頬は仄かに赤らんでいた。



「………覚えてたんだ」

「………まぁ、な」



そう一言だけ答えると、ばつが悪そうに
なつきはブレザーのポケットから小さな箱を一つ取り出した。



「ん」

「…何よ」

「やる」

「はぁ?いいわよ」

「人がやると言ってるんだ。素直に受け取れ」



半ば強引にその箱を持たせると、なつきはくるりと踵を返す。

そして何も言わずに歩きだした。



「ったく…ほんと素直じゃ無いんだから」

「………ばっかじゃないの」



台詞とは裏腹に、頬を染め口元を僅かに緩ます奈緒を見て
舞衣は笑い出しそうになるのを寸でで堪えた。



「……何よ」

「別にー?」

「……むかつく」

「おい舞衣!早くしないと置いて行くぞ!」

「はーい。今行く〜。あ、そうそう奈緒ちゃん」

「何よ」

「今日学校終わったらあたしの部屋でパーティーやるから宜しく」

「はぁ?あたし行かな…」

「主役が来ないなんてダメだからね!命もあおいちゃんも千絵ちゃんも…
 勿論なつきも来るからさ。ね?」

「……」


「腕によりをかけてご馳走作って待ってるから!じゃまた後で」

「ちょっ…」



奈緒の返事など全く待たず、舞衣はひらひらと手を振りながらなつきの元に走って行った。



「ったく……ばっくれようかしら…でもそしたらあおいがうるさいわね…」



あーめんどくさ。



精一杯の愚痴をこぼす奈緒の顔は、それとは裏腹にとても嬉しそうで。

梅雨時には珍しく晴れ渡る青空の下、彼女の笑顔は輝いていた。

 

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言い訳。

兎にも角にも自ら突っ込みたいのは
どれだけ遅れてんですか!?って事です orz

一度は没になったこのお話。
考えれば考える程話が完結せず、未完のまま放置されてたのですが
つい先日手直ししてアップとなった次第です^^;