「な〜つき」 「ん?」 在り来たりな日常 とある休日。 なつきはリビングにある大型テレビで、つい先日購入したシューティングゲームを堪能。 そしてそんな背中を微笑ましく見つめながら、静留は洗濯物を畳んでいた。 天候は快晴。 柔らかい日差しがとても心地よい春の日。 「うちな、なつきに聞きたい事あるんやけど」 「んー?何だ?」 背中を向けたまま静留の問いに答えるなつき。 その返事が然程、興味の色を帯びていないのは ゲームの得点があと僅かで新記録になろうとしている為だろう。 指先から目まで、なつきはいつになく集中していた。 が、 「なつきはうちのどんなとこ好きになってくれたん?」 「……っな!?」 ぴっ。 ドカーン… 「あ゙ぁ゙っっっ!!」 静留の予期せぬ質問に集中力が完全に削がれたなつきは、痛恨のコントロールミス。 結果、新記録樹立は先延ばしとなってしまった。 「あら。なつき。ゲームオーバーやて」 「う、うるさい!お、お前がいきなり変な質問するからだっ!」 「変な、やなんて。うちは真面目どすぇ?」 確かに振り返ったなつきとかち合った静留の目線は、真剣そのものだった。 「むー…」 質問の内容はまた別として、この目の時の彼女を躱すのはまず不可能だと、 今までの経験からなつきの脳が警告している。 なつきは諦めてゲームの電源を切った。 「えーと…何だっけ?」 洗濯物を畳んでいる静留の脇に腰を下ろし、なつきも洗濯物を畳みだした。 「せやから…なつきはうちのどんなとこ好きになってくれたん?」 「……さっきと一文字も変えずに言ったな」 「覚えてたのに言わせたん?いけずやねぇ」 二人して仄かに顔が赤いのだが、お互い恥ずかしがっていて相手の顔が見られないのがせめてもの救いか。 「何処が、と改まって聞かれてもなぁ…」 「なつきは最初からうちの事好きだったんとちゃいますやん」 「じゃあ聞くけど。お前は私の何処がす……す、好きになったんだ」 「うちは一目惚れやもん。まぁ勿論顔だけとちゃいますけど」 「うっ…」 それを言われてしまってはなつきからは何も言えない。 確かに静留の第一印象は良いものでは無かったし、なつきにとって外見などオマケみたいなものだったから。 静留の容姿は今更言うまでも無い。 しかしだからと言って、別に顔が良かったから好きになった訳では無かった。 「…んー…何処を好きになったか…か…」 腕を組みながら、なつきは思いつくままに言葉を紡いだ。 「えーと…待てよ……優しくて、しっかりしてて、世話好きで。 あ!そうだ。それでいて凄い大人っぽいと思いきや、時々妙に子供っぽいとこも可愛いし、 実は結構脆いとことかも守ってやりたいとか思うし…え〜と後は……」 「なつき…」 「え?」 「…………うち恥ずかしい…」 「んなっ!?」 指折りで思い当たる事を話しだしたら止まらなくなっていたなつきの台詞に 段々静留の顔の赤みも増していき、仕舞いには顔も上げられなくなる始末。 「はっ…恥ずかしいってお前が聞きたいって言ったんじゃないか!!」 「…そんなに言うてくれる思わんかったさかい…」 「な…あ、あの…あー…」 もう二人してこれでもか!と言うぐらい顔に熱が集中していた。 「でも…」 静留がきゅっとなつきの袖口を掴む。 顔に停滞していた熱が掴まれた付近の肌に分散していくのが解った。 「うち嬉し。なつきに…こないな事言って貰おて…いつも言うてくれんから…」 「……いつも言っていたら恥ずかしいだろ…寧ろ…恥ずかし過ぎて死ねる」 「ふふ…せやねぇ…うちもちょお心臓保たんわ」 「…ぷっ」 気候は実に穏やか。 春風の吹く優しい季節。 今日も静留はなつきの隣で彼女にだけ見せる表情で笑っている。 なつきも静留の隣で彼女に自らの全てを預けている。 気候もさる事ながら、二人を取り巻く空気も実に穏やかだった。 「どっか行こうか」 「せやね。でも何処行きます?」 「別に決めてないけど。いいじゃないか。気の向くままに」 貴方と二人で。気の向くままに -------------------------------------------------- 言い訳。 …日常的な話が大好きです(何