妄想シリーズ第二弾

〜奈緒が美容師さんだったら(前編)〜


風華の街に新しく出来たお洒落な美容室。
そこの店長を努めるのは二十代にして自らの鋭い考察力と話術を巧みに使い、
技術の面でもトップクラスの名を欲しいままにしてきた若きカリスマ、
人呼んでプリティーレディ、ナオ・ユウキ、その人である


「いらっしゃいませ」


奈緒の努めるこの店は老若男女問わず人気があり毎日予約でいっぱいの状況だ。

特に若い男女の支持率は非常に高い。


ファッション雑誌の取材も後を絶たないが、
奈緒は今まで一つとしてその取材を受けた事は無かった。


―――曰く、一つ引き受けたら調子に乗って次々やってくるのがうざいから、らしい。

今はビジネス云々よりもカリスマ美容師としての誇りが勝る様で、
昔の奈緒からすれば考えられぬ変化ではある。



からんからん


「いらっしゃいませーっ…てあんた何しに来たの」

「何しにってお前…それが客に対する態度か」

「何?髪切りに来たの?」

「美容室に来て飯食う奴がいるか」

「居る訳ないじゃん。ばかじゃないの」

「なっ…!!」

「あー…玖我…ちゃっかり予約してんじゃんよ。じゃぁ…あ、あんた、ちょっとこのお客の洗髪宜しく」

「はい。ではお客様、こちらへ」

「…次から違う店行くからな、くそっ」


〜奈緒が美容師さんだったら(後編)〜


「店長のお知り合いの方ですか?」

「え?」


洗い終えた髪を軽くタオルで拭きながら、スタッフの女性がなつきに尋ねる。


「あ、いえ、先程仲良く話されていたので」

「あぁ…知り合いと言うか…腐れ縁と言うか…」


自分と奈緒との関係を何と表現したら良いものか。
なつきは的確な言葉を探しかねた。


「犬猿の仲よ」

「あー…そうかなぁ…ってお前!」

「乾かし終わったらこっちの席にお願い」

「は、はぁ…」

「くっ…金払わないで帰るぞ…」


「でも…」

「ん?」

脇を去る奈緒を睨んでいたなつきに
スタッフが微笑みながら話しかける

「今日の店長機嫌いいですよ。何て言うか…楽しそう」

「ふーん…」

「大体自分からあんな乗り気で切ろうとしてるのが珍しいですし」

「店長のくせに何だそりゃ…」


最後の最後まで悪態をつきながらも、
なつきは万更でも無い笑顔で奈緒の元へ向かう


「何笑ってんの?」

「いや。宜しく頼む、店長」

「…仕方ないわね」


なつきには見えない様に微笑んだ事を偶然にも見た者は居なかった。



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言い訳。
妄想更にばく進中……


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