「なつき…何やのそれ?」 「え…いや…」 何でこんな事になったんだ。私が悪い訳じゃないだろう… Jealousy 学校から帰って早々静留と喧嘩した。 玄関まで出迎えに来てくれるのは、静留が先に帰っている日ならばいつもの事。 そして今日もそうだったのだが、私の右手に下げられた紙袋を見るや否や静留の機嫌は急変した。 「静留…いい加減機嫌を直せ…」 「…」 問題となった紙袋は、今日、見知らぬ後輩がくれた物だった。 まだ中は見ていないから詳しくは解らないが、本人が『ケーキを作った』と言っていたのでそうなのだろう。 「なつき…何やのそれ?」 「え…いや…これは…」 「誰かにもろたん?」 「…あぁ。何か知らない後輩に…」 「……ふぅん」 それだけ言うと静留はくるりと身を翻し、私を置いてリビングへと向かった。 「あ…お、おい」 置いていかれた私は慌てて靴を脱ぎ彼女の後を追った。 「静留?」 「何どす?」 リビングに向かうと静留は、リビングテーブルの椅子に腰をかけていた。 「何か怒って無いか?」 「あら、そう見えるん?嫌やわぁ。ふふ」 「…」 怒っているかどうかははっきり答えなかったものの、 その表情といい、台詞といい、間違いなく怒っている事が解った。 …大体全く目が笑って無いからな。 「おい…何をそんなに怒っているんだ…」 「なつきは随分ともててはるみたいやねぇ」 「えっ!?違う…だからこれはだな…」 「可愛い子ぉなんやろかぁ〜うち羨ましいわぁ」 「だからそんなんじゃないって言ってるだろう!?」 私の意見は右から左。 全く聞こうとしない静留に私も段々苛々してきて語気が少し強くなる。 「…今までのなつきなら」 「……え?」 口元だけ浮かべていた笑みが徐々に消え失せ、見る見るうちに静留の表情は不安の色を浮かべ始めた。 それに伴い、先程までに反して、次に紡がれた静留の言葉は何故か勢いを無くしたようにか細いものだった。 「昔までのなつきやったら…こんなん貰ってこんかったやん…」 「それは…」 「…昔までのなつきやったら断って返してたやん…何で今日は…貰うてきたん?」 先程までの強気はどこへ行ったのか。 心底心配そうに私に問う静留は小さな子供みたいだった。 「…はぁ」 「はぁ…て…何でそこで溜め息なんかつくん!?なつきは…っ…きゃっ!?」 全く…これだから嫉妬妬きは困る。 …まぁ私も人の事言えないがな。 私は静留の膝裏に自分の腕を入れると、そのまま彼女を抱き上げた。 属に言う、“お姫さま抱っこ”とか言うやつだ。 「なつきっ…!?」 「…」 慌てて静留が私の首に腕を回してくる。 その顔をちらりと見たが、赤くなっているのが垣間見れて嬉しかった。 しかしいくら静留が華奢な身体つきとは言え、長くこの態勢を続けるのには些か無理がある。 私は近くにあるソファに静留を少し乱暴に下ろすとそのまま上から組み敷いた。 「全くお前という奴は…」 「…何やの…?」 「何をそんなに心配する必要があるんだ」 「……なつきが…知らん子ぉから……今まではそんな事無かったさかい…」 「お前のせいだ」 「え?」 静留の柔らかい髪を片手で梳かす。 「お前のせいでこんなに甘くなってしまったんだ、私は」 「……どういう事…?」 皺の寄った眉間に軽くキスをすると、 頬が赤くなるのと比例して皺が深くなったのが少し面白かった。 「…誤魔化されへんよ」 「解ってる」 くすくす笑いながら彼女の耳元に顔を近付け、囁く。 「お前が私に人を好きになる事を教えてくれたんだ」 「…」 「どうしても返す事が出来なかった。何か…自分に置き換えてしまったんだ。 もし私が…お前に貰ってもらえなかったら…とか。 私はお前と出会って、お前を愛して…甘くなってしまったんだ。…ダメかな?こんな私じゃ」 「……卑怯どす」 「はは。何が?」 「…知らん」 「言わなきゃキスするぞ」 「…」 「ほら。早く言え」 「………尚更言う訳無いやん」 そう言って顔を更に染めた静留はやっと笑顔を見せてくれた。 「私が好きなのはお前だけだ」 「……まぁ、今日のとこは信じてあげますわ」 「はは。それは光栄だ」 静留の回された腕に引き寄せられて、私達は仲直りのキスを交わした。 -------------------------------------------------- 言い訳。 えっと…リクは“抱っこ”だったんですが… 抱っこなんてほんの一瞬しかしてませんねぇ… あれー…orz しかもなつきがへたれて無いのはここのサイトじゃレアです(笑