敵わぬお人


「ふぅ…」

「お疲れさんどす、学園長」



いい薫りが、注がれたコップから漂う。

品の良いお茶は、入れてくれた人物の気品の良ささえ際立たせるものだ。



「少し休んだらどうやろ?」

「あぁ…ありがとう」



そう言いながらも、手元にある書類から目を離さない学園長の姿に苦笑しながら
その補佐を努めるシズル・ヴィオーラは、自らが入れたお茶を啜った。



「なぁナツキ」

「何だ?」

「お茶、冷めますぇ?」

「あぁ…」



それでもお茶には目もくれず、
ひたすら目の前の書類を一枚一枚処理していくガルデローベ学園長こと、ナツキ・クルーガー。

最近はアスワド、シュヴァルツ、黒き谷の者の出現、はたまた学園内でのもろもろの事件等、
相次ぐ問題のせいで忙しさに拍車が掛かり、寝る暇さえ奪われる事もしばしばである。

学園長の威厳を守る手前、皆には疲れの“つ”の字も見せないが
シズルからすれば、そんなもの手に取るように明らかなので心配は尽きない。



「ナツキ」

「ん?」



―――少しでも休憩を取って欲しい。


邪魔はしたくないが、ここのところのナツキは余りにも根を詰めすぎだ。

下手したら身体だって壊しかねない状態である。



「あんな、昨日の事なんやけど」

「シズル。話なら後でいいか?」



黙々と書類と格闘するナツキだったが



「生徒さんに告白されたん」

「………何だと?」



シズルの口から出た意外な言葉にやっとその手も止まった。



「……誰からだ?」



シズルとしてはナツキの気を引く為に言った事なので、作戦成功の喜びは勿論あったが、
思いの外食い付いてきたナツキに違う嬉しさが込み上げてきて、無意識に口角が上がってしまった。



「あら?ヤキモチ?」

「ばっ…そんなんじゃない!」



悪戯な笑みでからかわれたナツキの顔は一瞬にして真っ赤に染まる。

それが自分でも解ったのか、ぷいっとシズルから視線を外した。

そんな姿が可愛くてシズルは微笑みながらナツキの隣まで歩み寄ると
綺麗な指でナツキの眉間を撫でた。



「…何だ」

「さっきより眉間に皺、よってはるぇ?」



くすくす笑いながらシズルは優しく撫で続ける。



「……誰のせいだ」

「さぁ?誰やろな。うち解らん」

「…お前…いい性格してるな、相変わらず」

「あらぁ?おおきに」

「…誉めたんじゃないんだが、な」



そう言いながらも、ナツキからは久しぶりに笑顔が零れた。



「ふふ。全く。お前には敵わないよ」

「昔からやろ?」

「……否定は出来んな」



苦笑いしながらすっと席を立つと、おもむろにシズルに一瞬だけ口付けた。



「っ!?」

「シズル。有難う」



それだけ言うとナツキは、先程入れて貰ったお茶を持ってソファに腰を降ろした。



「シズルの入れてくれるお茶はほんと気持ちが休まるな」



ソファでくつろぐナツキの後を追い、シズルも同様に腰を降ろす。



「うちかてナツキには敵わん…」



シズルの顔は仄かに赤かったが、それでもとても幸せそうに笑っていた。





「それにしても」

「はい?」

「お前は相変わらずもてるんだな」

「ん〜…そうやろか?」

「はぁ?とぼけたって無駄だからな。大体お前は学生の時から気に入った奴がいたら
そりゃ手当たり次第手を出して…」

「ナツキ」

「…何だ?」

「人はな、それをヤキモチって言うんどす」

「……………知ってる」  



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言い訳。
初めて乙のリク頂いたので書いてみたんですが…
何かもう自分が良く解りません(笑
やっぱ書き慣れてないのはトコトン駄目ね。


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