同窓会


  がやがや…


「――で?最近どう?元気してた?」

「まぁぼちぼちだな」


久しぶりに会った友はみんな元気そうで少し嬉しかった。
らしくも無いので、わざわざ口に出しては言わないが。

それでもやはり見知った人間が元気な事は手放しに喜べるものだ。



今日なつきは同窓会なる物に招待されたのである。
同窓会と言っても、主催者が碧や舞衣らそこらへんなのでカラオケ同好会の延長に近いが。
それでも暫らくぶりにみんなに会えた事は嬉しかった。


「それにしてもみんな変わらんな」

「あんたもまんまよ?」

「……お前もな」

まぁ舞衣の事だからそんな答えが返ってくる事は目に見えていたが。
片眉を上げながらなつきは手にしたワインを口にした。



(あぁは言ったけど…)

本当に綺麗になったな、と舞衣はなつきを見て感嘆したものである。
主催者である舞衣、それから命、奈緒が一番最初に会場となるホテルに着いてから、約一時間後、
なつきは静留を伴って会場に現われた。

二人が会場の扉を開けて入ってきた時、冗談抜きで持っていた食器を落としかけた。
それ程までに二人は綺麗だった。それはもう、一枚の絵画の如く。

「ん?どうした?」と不思議そうに聞いたなつきの台詞が無ければあの沈黙はいつまで続いたのだろう。
その一言のお陰で沈黙が破られてからは奈緒の冷やかしが始まり、その場は明るくなったのだが。



「そういえば舞衣、お前達結婚はまだか?」

「ぶっっ!げほっ!な、何よいきなり…」

「え?あぁすまん」


なつきはチーズを摘みながらしれっと言う

「でも付き合って長いんだし…今は一緒に暮らしてるんだろう?」

「まぁね…そろそろいいかな〜とも思ってはいる…かな。あたし的には」

「成る程。つまり楯次第って事か。まぁ結婚式には呼んでくれ」

「うん。まぁそうなったらね。藤乃さんと一緒に招待する」

「はは。解った」


そう言って微笑んだなつきは本当に綺麗だった。






「こんなところに居たのか」

「なつき」


舞衣と一通り喋り、ふと会場を見渡すと静留の姿が無かった。

(あいつどこへ?)

既に酒の回り始めていた碧の絡みを上手く躱し、なつきは会場の外に出た。
トイレにでも行ったのだろうかと廊下を一人歩いていると、
ちょうど曲がり角に差し掛かる少し手前、休憩所のソファに彼女は一人、座って居た。


「こんなところで何をしてる?」

「あぁ…なんやちょお疲れてしもうてな」

「そうか。立食だったしな…大丈夫か?」


大丈夫、と笑顔で返事をした静留を見て、なつきは彼女の向かいに腰を下ろした。


「みんな元気そうで良かったな」

「せやね。ほんまに」


静留は綺麗に微笑んだ。しかしその綺麗過ぎる笑顔がなつきには何故かひっかかった


「静留?」

「ん?」

「どうした?」

「何もあらへんよ?」


飽く迄“何も無いから”と言い通すかの如く、静留は優しく微笑んで見せた。

「はぁ…」

殆ど独り言の様になつきはため息を吐きながら言葉を続ける


「お前なぁ…今更だぞ?」

「え?」

なつきの言葉に静留の笑顔が少し崩れた。
しかしその変化など他の誰かが見たら気付かない程の物だが。


「今更私に隠し事なんて無理だ。お前の笑顔を一番側で見ているのは誰だと思ってる」

まぁ泣き顔や怒った顔を一番見てきたのも自分なんだろうけど…となつきは苦笑しつつ呟いた。

「…なつきにはかなわんなぁ」

諦めに似た様に少し息をついてからぽつりぽつりと、静留は言葉を洩らし始めた。


「碧せんせや鴇羽さんが主催やったら、きっとこれからもこないな風に集まったりするんやろうな」

「え?あぁそうだろな。あいつら、わいわいやるの好きだから。…ってお前今日来たくなかったのか?」

「あぁ、ちゃいます。今日はみんなに会えてうちも楽しかったし」

「じゃあ何だ?」


いまいち話の先が見えてこない。なつきは軽く首を捻る


「…友情なんてそうそう簡単に崩れるもんやないやろ?」

余りにひどい事が無い限り。
静留は意図的に“友情”という言葉に力を入れた


「せやからきっとこうやってまたみんなで集まったりするやろ?」

「…あぁ」

「……うち、こうやってこれからもずっと来たいんよ」

「…?来ればいいじゃないか」


台詞の裏に違う意味も込めた。それをなつきは汲んでくれたら嬉しい。そんな期待も込めた。
しかしなつきには見事に伝わらなかったらしい。


「……なつきのあほ」

「はぁ!?何だいきなり」


静留は不貞腐れた様に頬を膨らませると、すっとソファから立ち上がり会場へと向かう。


……うちの事、何でも解る言うてくれたやないの。

「あ、おい。置いていくなよ」


やれやれとなつきは苦笑しながら席を立つと、おもむろに着ていたスーツのジャケットを脱いだ


「静留」


小走りで少し先を歩く静留に追いつくと、
なつきは自らが脱いだジャケットを彼女のドレスでむき出しの肩にかけた


「…なつき?」

「また来よう。勿論二人で、だ」


先の事なんて解らないけど


「せやけどうち、なつきと…その…」

「別れたら気まずくて会えないとか言ったら怒るからな」

「…」


――やれやれ。やっぱりその手の事か。
本日何度目かのため息を吐くとなつきは左腕を静留に向かって差し出した。


「一生私の側にいろ。いてくれ、じゃないぞ。いなきゃ駄目なんだからな。
それでまた次の同窓会も二人で来るんだ。いいな!」

「…なつき」

「ほら行くぞ」


差し出された左腕にそっと自分の右腕を絡ませ、静留は先程とは違うあどけない笑みを見せた。


「私はお前のその笑顔が一番好きだ」

なつきも穏やかに笑う

「…おおきに」


かけられたジャケットを左手で、彼女の腕を右腕で強く握り締めながら
なつきの隣を歩く自分を幸せに思いながら会場へと戻って行った。



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言い訳。
何?同窓会て。
すみません、今描いてるTOP絵から連想しました…
てかリクなのに超自己満な気が…


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